
将来のことを考え、少しずつ投資を始めようと思っていながらも
「とはいえ、私には知識がないし勉強の時間も取れない…」
「初心者には投資信託がおすすめと聞いたけど、なんだか難しくてよく分からない」
このように考えてしまい、なかなか行動できない人が多いものです。
しかし、投資信託は基本的な知識さえ身につけてしまえば難しい経済のニュースを追いかけなくても利益を出すことが可能です。
この記事では投資信託の仕組みと、あなたに合った商品の選び方を分かりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
投資信託とは
投資信託を一言で表すと、「投資のプロにお金を運用してもらう仕組み」です。
購入時に支払われたお金は運用資金としてまとめられ、投資のプロが国内外の株式や債券、不動産などの投資先を指示します。
運用によって発生した利益からは手数料が引かれ、その後、投資した金額に応じて投資信託の購入者に分配される仕組みです。
「他人にお金を運用してもらうなんて不安…」と思うかもしれません。
ですが安心してください。
投資したお金については、法律で厳しくその管理方法が定められています。
過去には銀行員が会社のお金を横領した事件もありましたが、顧客が損をすることはなく、銀行によって全額補償されています。
そもそも、投資信託の購入時に支払うお金は一つの会社が管理しているわけではありません。
まずは販売会社(銀行や証券会社など)が投資信託の募集・販売を行い、投資家から資金を集めます。
そこで集められたお金は管理会社(信託銀行)で保管され、実際に資金を運用するのは運用会社(投資信託会社など)です。
このように、投資信託はそれぞれの会社がそれぞれの役割を分担する形になっているため、お金を預けていた会社が隠れて不正をしていた、なんてことができない仕組みになっています。
投資信託のメリット
資産運用には「卵は一つのカゴに盛るな」ということわざがあります。
卵を一つのカゴにまとめてしまうと、そのカゴを落としたらすべての卵が割れてしまいますよね。
しかし、卵を複数のカゴに分けておけば、たとえカゴを落としても一度に全部割れるという事態は防げます。
投資も同じで、例えば一つの会社にすべての資金を投資してしまったら、その会社の業績悪化で大損するリスクがあります。
その点、投資信託は自動的に投資先が分散されるため、あれこれ考える手間なくリスクを軽減できます。
株式の売買は基本的に100株単位、債券は10万円以上を一単位としていることが多いです。
例えば、2023年1月12日時点でトヨタ自動車は一株1,857.5円ですので、100株単位だと185,750円も必要となります。
これではなかなか気軽に投資を始めることはできませんし、何百万、何千万という資産がない限り、投資先が偏ってしまうことも避けられません。
しかし、投資信託はほとんどの商品が月々1万円程度から購入できます。
例として、国内株式で構成されている三菱UFJ日本株グロースオープン (愛称:ステージ21)は2023年1月6日現在10,735円から購入できます
また、金融機関やサービスによっては、100円から購入できるものもあることを覚えておいてください。
例えばSBI証券では、取り扱っている約2,700本以上(2022年5月31日現在)の投資信託のほぼすべてが「1銘柄100円」から購入できます。
個別銘柄の場合1分1秒ごとに激しい値動きがあります。
デイトレーダーのように短期で売買する方法もありますが、この方法で利益を出すには相場に対する深い知識が必要です。
また、たった一つの選択ミスで大きく損をしてしまうこともあるため、心理的な負担も相当なものになります。
そのため、初心者がいきなり短期売買に手を出すのは難しいと言わざるを得ません。
長期で保有することを考えても、個別銘柄には倒産のリスクがありますし、値動きの激しさで心も乱されてしまうでしょう。
一方で、分散投資を前提とした投資信託には破綻のリスクがほとんどありません。
一口あたりの時価である基準価額の価格変動も緩やかなので、定期的に大幅な価格変動が無いかチェックするだけで大丈夫です。
個別銘柄のように大きく利益が出ることはありませんが、低リスク・低リターンで初心者でも比較的安心して投資を始められます。
投資信託のリスク・デメリット
投資信託は運用成績によって利益が出ることもあれば、値下がりして損をする場合もあります。
そのため、余剰資金がない限りは投資を始めるべきではありません。
例えば、1、2年後に備えて貯めている結婚資金(500万円)を投資に回したとしましょう。
では、もし投資が上手くいかず、この資金が半分の250万円になってしまったらどうでしょうか。
最悪の場合、予定していた結婚式をキャンセルしなくてはいけなくなります。
このような事態は絶対に避けたいですよね。
ちなみに少数ですが、元本保証がある投資もあります。
例えば、国にお金を貸し、定期的に利子を受け取る個人向け国債は、日本が崩壊しない限り元本保証があるといえます。
個別銘柄であれば、その会社の業績が伸びると株価が大きく上がります。
しかし、投資信託は複数の投資先があるため、一気に基準価額が上がることはほとんどありません。
例えばトヨタの株が上がりそうだと考え、日本株に投資する投資信託を購入したとします。
実際にトヨタの業績が大きく伸びた場合は利益も大きくなります。
しかし、個別銘柄としてトヨタの株を買う方がもっと利益が出ます。
ピンポイントで投資したい場合は、個別銘柄を選んだほうがいいでしょう。
以下の三つは投資信託ならではの手数料となっています。
購入時手数料
購入時に販売会社に支払う手数料です。
購入時手数料がないファンド(ノーロードと呼ばれる)もあります。
運用管理費用
投資信託の保有時にかかるコストです。
販売会社、委託者(運用会社)、受託者(管理会社)のそれぞれの業務に対する手間賃で、信託財産から日々差し引かれます。
信託財産留保額
投資信託を換金する時にかかるコストです。
運用者にとっては、投資信託を頻繁に解約されてしまうと安定的な運用ができなくなってしまいます。
短期売買を極力減らし、投資信託の運用を安定させるために信託財産留保額が設けられています。
個別銘柄の株式は、保有株数に応じてその企業の商品やサービスを受け取れる制度(株主優待)を設けていることがあります。
ですが投資信託の場合、企業に投資しているのはあくまで資金を管理する信託銀行であるため、投資信託の購入者には株主優待を受ける権利がありません。
投資信託の購入方法
投資信託は販売会社(証券会社、銀行、保険会社、信用金庫、郵便局など)にて購入可能です。
ここでは、一番販売額が多い証券会社での購入の流れを説明します。
証券会社は実際に店舗がある形式と実店舗を持たないネット型証券会社に分かれます。
店舗型証券会社とネット型証券会社の違いは以下の通りです。
店舗型
店舗型は対面や電話でアドバイスが受けられるのがメリットですが、そのぶん手数料が高くなっています。
例えば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型<為替ヘッジなし>予想分配金提示型」の場合、三菱UFJ銀行の販売手数料は3.3%、楽天証券は0%となっています。
2023年1月11日時点の一口の価格は9,425円となっているため、価格が変動しないという前提で、毎月1口購入していくと、年間9,425円×0.033×12=3,732.3円の差になります。
ネット型
人を介さないため、多くのネット型証券会社では購入時手数料が無料です。
また24時間いつでも売買できる証券会社もあります。
しかし、投資のアドバイスは受けられないので、自分で商品を調べた上で購入する必要があります。
おすすめはネット型
店舗型で投資信託を買い続けたとすると、ネット型と比べ年間4,000円程度の損が出ます。
例えば20年買い続けた場合、累計100,000円程度の大きな差となります。
しかし、ネット型で購入すればそんな損をする必要はありません。
投資信託初心者用の薄い本を一冊読み、不明点はネットで調べれば最低限の知識は身につきます。
半日〜1日勉強するだけで、長期的に考えると10万円以上得をすることになりますので、ネット型を選ぶ方が断然お得です。
投資信託は一般的な銀行の普通預金口座では取引できません。
そのため、まずは販売している会社の証券口座を開設する必要があります。
いちいち別の口座が必要なんて面倒だと思うかもしれませんが、証券会社には自社の資産と顧客の資産を厳重に分ける義務があります。
万が一証券会社が潰れても、この仕組みのおかげで顧客の資産は守られているため、実は私たちにもメリットがあるルールなのです。
店舗型証券会社とネット型証券会社の口座開設をするにあたって、事前に本人確認書類や印鑑などが必要となります。
証券会社ごとに手続きが異なるため、お店へお問い合わせをするか、証券会社のホームページを確認しながら手続きを進めましょう。
投資信託は好きなタイミング、好きな金額で購入できる一括購入と、毎月定額の資金を積み立てていくつみたて購入の2パターンがあり、おすすめはつみたて購入です。
一括購入は自分が買い時だと感じたタイミングで購入し、一気に資金を増やせるというメリットがあります。
また、短期間で複利の効果を得られやすいという特長もあります。
一方でつみたて購入のメリットは自動的に安い時に多く買い、高い時に少なく買うことです。
こうすることによって高値の時に一気に購入してしまうリスクを減らせ、損をする可能性を低くできます。(ただし、取引回数が多い分手数料がかさむこともあるので注意が必要)
つみたて購入は長期的に見て価格上昇が見込まれる商品を買う必要があるため、少なくても5年以上は期間を見ることになります。
初心者の場合はリスクの少ないつみたて購入がおすすめです。
投資信託の選び方
投資信託を選ぶときは、まず株式、債券、不動産など投資対象を決めます。
あらかじめリスクを確認し、想定される最悪の事態が受け入れられるものを選びましょう。
例えば教育資金として必要なお金の場合、大きく元本割れし学費が用意できなくなっては大変なので、あまり大きなリスクは取れません。
極力低リスクなものを選ぶことになります。
一方で、資産に余裕があり、大きく元本割れしてもダメージの少ない人であれば、ハイリターンを狙ってハイリスク商品を選ぶのも一つの方法です。
安定した運用を望むなら債券の割合が高いもの
固定金利の債券であれば購入時にあらかじめ利子が決められており、償還日まで運用した場合の収益額が明確にわかります。
債券の価格が変動した場合であっても、償還日まで保持しておけば額面通りの金額が戻ってきます。
例えば「株式会社クレディセゾン 第94回無担保社債(社債間限定同順位特約付)」を100万円で購入したとしたら、毎年1,000,000円×税引き後利率0.573%=5,730円の利子を受け取った上、償還日の2028年1月31日に100万円が返ってきます。
ただし、地方公共団体や企業などの発行体の状態によっては額面金額がもらえなくなるケースもあるので、受け入れられるリスクの範囲で購入しましょう。
インデックスファンド
ベンチマーク(日経平均株価やTOPIXなど運用目標とする基準のこと)に連動した運用成果を目標とする運用スタイルです。
アクティブファンド
ベンチマークを上回る運用成果を目標とする運用スタイルです。
リスクを取ってでも資金を増やしたいなら、一括投資で株式の割合が高いアクティブファンドを選ぶとよいでしょう。
インデックスファンドとアクティブファンドに向いている人の特徴は以下の通りです。
インデックスファンド
- 投資に手間や時間をかけたくない
- リスク対策に重点を置きたい
- 値動きがわかりやすい方がいい
アクティブファンド
- 投資先の銘柄や手法にこだわりたい
- 高いリスクとコストを払ってでも短期間で利益を増やしたい
- 上がる可能性のある銘柄に大きく資金を投入したい
リスクを極力減らしたいなら、つみたて投資で債券の割合が高いインデックスファンドを選ぶとよいでしょう。
例えば貯金のようにちょっとずつでもいいから、極力リスクを減らしつつ高い確率でお金をコツコツ増やしたい人が該当します。
また、「どうせ投資をするなら損をする可能性があっても、お金をたくさん増やしたい」という考えならアクティブファンドを選ぶのもいいでしょう。
ただし、アクティブファンドは大きなリターンを期待できますが、知識や経験が必要です。
初心者で知識が無い人であれば債券の割合が高いインデックスファンドをおすすめします。